私たちの水量増加運動は日田市上流の大山川にある松原発電所と日田市下流の柳又発電所の水利権が平成11年3月に30年ぶりに更新期を迎えることから始まった。ダムができ取水が始まって以来、改善された今でも松原ダム直下では0.5立方メートル/秒(自然流量はおよそ25立方メートル)の放流が普通であり、この二つの発電所の影響で大山町、日田市が大きな減水区間となっているため、住民あげて水量の増加を熱望している。
この運動の目的は、もちろん水量と河川環境を昔の状態に近づけることだが、もうひとつの目的は、こんな川にしたのは、当時の国策とはいえ、私たち自身の過剰な消費社会が原因であること、つまり自分たちが原因であることをみんなに気づいてもらうことである。
30年前は、エネルギーや経済成長のためには、川の水を全部使ってもよいとさえ考えられていたが、今は時代が変わり、自然破壊型の公共事業や開発、過剰な消費生活などに支えられた経済社会をこれ以上続けてはいけないと、だんだんみんなが気づいてきた。
この運動の中で、「水利用は、最大でも自然流量の半分まで。」と、私たちは提案している。人間をはじめとする生物が自然の循環の中でしか生きられない以上、水利用に限らず、自然の半分以上を犯すような行為はしてはならない。これは、絶対に忘れてはいけない大原則である。
河川法も平成9年に改正され、これまでの治水利水に加え、河川環境を重視し、住民の考えや地域との関わりにも配慮する河川行政となった。
これからは、官民一体となって、流域全体で自然環境やその関わりを取り戻し、企業活動や個人生活を含め、全てのことに関して自然環境をベースとした循環型の経済社会を創っていくことが急務である。過去の考え方や前例にとらわれず、そのために必要な施策は思い切ってやることが必要だ。
<季刊『筑後川』より> |